私たちは「地理的な離島はあっても、人の命に離島があってはならない」を合言葉に地域住民とともに医療活動を行ってきました。研修目標は「離島診療所の医療活動を独力で担える基本的臨床能力を身につける」ことです。主に1年から2年、地域拠点病院と呼ばれる100床規模の病院を中心に研修を開始します。
<奄美中央病院における後期研修要綱>
奄美医療生協医師研修委員会
2008年7月23日 作成
2010年7月01日 改定
<奄美中央病院の概要>
奄美中央病院は、内科・外科・小児科を要する110床の病院です。一般病床が85床、亜急性期病床25床で運用しています。救急医療から比較的長期の療養を必要とする高齢者医療、およそ120名を管理する在宅医療まで、幅広い医療活動を行っています。近隣の診療所や介護保険施設との医療連携も確立しており、重症管理や血液浄化法など、一部2次医療機関としての役割も担っています。
また、奄美3院所のセンター病院として、南大島・徳之島の両診療所への定期診療支援を中心に、診療所勤務の若手医師のサポートを行っています。
一般目標:独力で診療所を担える力量を身につける
【総合的問題解決能力を身につけるために】 | ||
1. | 患者の医学的問題点を列挙できる。 | |
2. | 患者が療養する際の社会的問題点を列挙できる。 | |
3. | 患者に対し有用な社会資源を列挙でき、活用できる。 | |
4. | 病院の医療機能の限界と、他院に紹介すべき病態を列挙でき、紹介ができる。 | |
5. | 高齢者の特性を踏まえた疾患管理方法を選択できる。 | |
6. | 在宅医療による疾患の慣例ができる。 | |
7. | 慢性疾患の継続的管理ができる。 | |
8. | 組織活動への参加を通して、働く人々の健康問題をつかみ、意義を理解する。 |
【チーム医療、民主的集団医療を実践するために】 | ||
1. | 院内外の他職種スタッフとのカンファレンスを運営し、治療方針を立て、共同の力で問題を解決できる。 | |
2. | 病棟や医局の運営に際して、その集団の一員として意見を述べたり運営に協力したりする事ができる。 | |
3. | 各種委員会において、運営の中心的役割を担える。 | |
4. | 医療生協の組織活動を理解し、意見を述べ、実践できる。 | |
5. | 共同の営みとしての医療について述べる事ができ、実践に向けて努力する。 |
【社会的問題を見出し、解決するために】 | ||
1. | 患者の背景にある社会的問題を把握できる。 | |
2. | 社会的問題の解決のために、家族、地域の医療機関、福祉関係者、自治体などと連携できる。 | |
3. | 地域の医療要求を理解でき、その実現のために地域住民、医療機関、福祉機関、自治体に働きかけられる。 | |
4. | 医療情勢、社会情勢について学習し、他者に分かりやすく説明できる。 |
行動目標及び方略:
Ⅰ.綜合臨床能力の獲得 | ||
1. | 学会での演題発表を行う。学会参加も積極的に行う。 | |
2. | 文献検索、院内図書の活用などEBMの活用を行う。 | |
3. | 継続した内科予約外来を受け持ち、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の管理方法を身につける。 | |
4. | 慢性疾患管理グループに所属し、慢性疾患管理の基本を学ぶ。 | |
5. | 救急当番を担当し、一般救急診療を行う。トリアージ・コンサルトの力量を高める。 | |
6. | チーム医療のリーダーとして、必要な事を考え、実践する。 | |
7. | 訪問診察の担当医となり、在宅療養の理解を深める。 | |
8. | 上部消化管内視鏡検査は目標300件以上。基本的な挿入手技・病変の鑑別、生検診断まで独力で可能となる事を目標とする。 | |
9. | エコー手技は救急外来や病棟受け持ち患者を中心に、実践的に取り組む。 | |
10. | 胃透視の読影は、読影担当指導医のもと身につける。 |
Ⅱ.民主的集団医療の実践 | ||
1. | カルテ記載を重視し、退院総括、summary、返書の期限内記載を遵守する。 | |
2. | 定期的なカンファレンス、面談を行い、病状と治療目標を明確にし、患者・家族・コメディカルスタッフとともに健康な生活へ向けた取り組みを行う。 | |
3. | 医局会議に参加し、病院運営に意見を述べる。 | |
4. | 離島フィールドに積極的に参加し、後継者育成に携わるとともに、集団で企画を運営することを理解する。 | |
5. | 慢性疾患管理グループに所属し、リーダーの役割を理解する。 | |
6. | 世代会議や青年医師の会に参加し、次世代の医療展開などへの論議に参加する。 | |
7. | 全日本や九州沖縄地方協議会の企画に参加し、全国の青年医師との交流を図る。 |
Ⅲ.医療制度 | ||
1. | 診療報酬制度について学習する。 | |
2. | 身体障害者手帳・特定疾患・障害年金などの社会資源についての理解を深める。 | |
3. | 介護保険制度についての理解を深める。 | |
4. | 医療情勢の変化の歴史を知り、改善の為の運動に参加する。 | |
5. | 経営についての基本的知識を身につける。 |
Ⅳ.後継者育成 | ||
1. | 離島フィールド企画に積極的にかかわる。 | |
2. | 初期研修医の研修に屋根瓦として関わり、共に成長する。 | |
3. | 看護学生などの実習や高校生の体験企画などに協力援助を行う。 |
Ⅴ.医療生協・民医連運動 | ||
1. | 医療生協運動や民医連の活動の歴史及び、現在の方針についての理解を深める。 | |
2. | 支部の担当者になり、班会に年間を通して参加する。また、班員の健康相談にも関わる。 | |
3. | 加入増資の活動を理解し、職員の先頭に立って実践する。 |
Ⅵ.平和活動 | ||
1. | 平和運動の意義を知り、活動に参加する。 | |
2. | 憲法を守る運動の意義を知り、活動に参加する。 |
評価:
Ⅰ.評価表 | |
評価表を準備し、研修委員会までに作成します。日々で得たものは極力ポートフォリオし、将来の糧にして下さい。 | |
Ⅱ.フィードバック方法 | |
基本的には、問題点はその場でフィードバックすることを心がけます。研修委員会、その他の重層的な会議では、如何に不十分な点を克服し、良い点を伸ばすかということを議論します。 | |
Ⅲ.ポートフォリオ大会 | |
可能な限り、鹿児島生協病院でのポートフォリオ大会参加を追及します。 |
支援体制:
Ⅰ.内科総合研修 | |
内科医として受け持ち症例に関する主治医となり、全ての責任を持ちます。症例ごとに、指導医を配置し適宜助言を仰ぎます。 | |
Ⅱ.研修委員会 | |
開催日時:毎月第1木曜日17時30分~18時開催。 参加:診療部長・研修担当医・研修医・病棟師長・外来師長・医事担当者。 研修評価表を基に、毎月の研修の進行状況を確認し、翌月の研修目標を立てます。 研修の環境整備についての議論を行います。 内容については医局会議、法人研修委員会、県連医師研修委員会に報告します。 6ヶ月が過ぎた頃には中間総括および報告を行い、研修の進捗状況を確認するとともに残り6ヶ月の研修目標を再確認します。 |